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< 対 談 後 編 >
内藤 章江氏 × 三木 ゆか

(前編はこちら)

“制服をリニューアルする学校が多い理由”
三 木: それでは、前編の難波先生に続き、現代の制服については、内藤先生、宜しくお願いたします。内藤先生は、被服心理学の研究をなさっているのですよね。まずは、先生の自己紹介をお願いいたします。
内藤氏: 内藤章江と申します。現在、グローバルリーダーシップ研究所の特任講師として、女性リーダーの育成に関わる教育や取組、女性研究者の研究活動を支援する取組を担当しています。担当業務には私の専門分野である被服心理学や被服意匠・色彩学の知識や研究成果を活かしています。私が行っている研究は、どういう人がどういう場所で、どういう服を着ると、どのようなイメージが形成され、それが着用者本人や周囲の人々にどのような心理的・生理的影響を与えるのかを明らかにするものです。
三 木: その中の1つに制服の研究があるのですね。
内藤氏: はい。中高生が主に着用している学生服、いわゆる制服ですが、その制服が着用者本人や周囲の人にどのような影響を与えるのかという研究を行いました。

三 木: 最近の制服の役割や大きな傾向を伺えますか?
前編の難波先生のお話を伺う中で、時代が変わっても、人は機能性だけではなくイメージや象徴性を求め、また着る人の思い入れもあって、袴やセーラー服を取り入れたというのはわかったのですが、現代はどこまでいっているのでしょうか?
内藤氏: 日本毛織株式会社の調査データ「全国中・高校制服モデルチェンジの動向」によりますと、2016年度に制服をモデルチェンジした中学、高校が200校以上あります。とても多いですよね。2014年に実施した私と株式会社チクマの共同研究「学校制服の現状と意識調査」による調査結果では、制服をモデルチェンジする理由として「学校の記念事業として」を挙げる学校もありましたが、子どもの数が減ってきているので、制服をリニューアルすることで新規性を出す、すなわち生徒の「募集対策」のためにモデルチェンジする学校もあるようです。特に女子生徒は、「あの学校の制服を着用したい」という憧れで学校を選択するケースもあることから制服が学校選択の一要因となっていることがうかがえます。
三 木: 結構な数の学校で制服のリニューアルが行われているのですね。
リニューアルというと、今までと大きく変えるのが主流ですか?
内藤氏: 伝統的な部分を残しながら新しい要素を取り入れてチェンジする学校もあれば、ガラッとイメージを変える学校もあります。
先程言いました記念事業で変える場合は、教師や生徒、卒業生の意見も聞きながらみんなで作り、それを採用するというやり方もあります。
三 木: 現在の制服の色やデザインの傾向はどうですか?
内藤氏: こちらも先程ご紹介しました日本毛織株式会社の調査データによりますと、色は、上衣も下衣も紺が一番多く、モデルチェンジをした学校の約70%以上が上衣に紺を採用しているそうです。次いでグレーや黒が多いようです。
下衣に関しては柄物もあります。
それ以外は少数ですが、グリーン、茶、(キャメル)などがあります。
色の採用理由はさまざまあると思いますが、紺は、知的な印象が強いという事、また時代に左右されず飽きがこないという事で学校制服として採用されやすいのではないかと見ています。紺のような無彩色に近い色は、他の有彩色と合わせてもケンカすることなく扱いやすい事、また規律心を身につけさせるのにふさわしいという事もあります。
そのような事から、現在に至るまで制服の色として紺が支持されているのではないかと見ています。
先生と生徒が制服に求めるイメージの違いとは?
三 木: そもそも着る側は、制服をどのように捉えているのでしょうか?
内藤氏: 先程もご紹介しました2014年度に実施した私と株式会社チクマの共同研究「学校制服の現状と意識調査」において、先生と生徒それぞれに「制服を着用する事で相手にどのようなイメージが伝わればよいと思いますか?」と調査した所、次のような言葉が挙がりました。
先生からは、「真面目さ、清潔感、社会性」、「中学生、高校生らしさ」、「落着き」、「気持ちの引き締め」、「帰属意識」、「元気さ」、「スマートさ」が挙がります。生徒からも同じような言葉が挙げられているのですが、先生からは挙がらなかった言葉が出てきます。 それは「個性」と「かっこよさ」です。そもそも制服の役割は、「集団を統制する」「個性を出さない」という意味合いが強いのですが、着る側は制服で個性を出したがっています。着崩したり何かを外したり足したりして、他の子たちとちょっとした違いをつけたいと思っているのです。この調査で、生徒と先生では制服に対する意識や伝達したいと思っているイメージが違う事がわかりました。
「制服を着た時にどのようなイメージが相手に伝わるのか」について、実は、これまであまり調査されていなかったのです。

三 木: それは、結構びっくりですね。
内藤氏: そこで、2014年度に株式会社チクマと「制服のデザインにより形成されるイメージ」に関する共同研究を行いました。この研究は、ベーシックなデザイン(現在良く見かけるタイプ)の制服を中高生がどのように捉えているのか、また、デザインや色、組み合わせ方でどのようにイメージが変化するのかを明らかにするものです。この成果をもとに、着崩さずに着用したくなる制服、すなわちスタンダードな着方が生徒にとって望ましい状態となるような制服を提案できるようになるといいなと考え、実際にベーシックなデザインを展開して新しいタイプの制服デザインを提案・作成しました。愛着を持って制服を着用することで生徒らに愛校心が生まれ、先生方が望む道徳心も学ばせることができるのではないかという期待も込めて研究を行いました。
ネクタイVSリボン
内藤氏: この共同研究において、14種類のベーシックなデザインの制服を、中学生や高校生630人に見せ、「この制服を見てどのように感じますか?」と質問し、「個性的な感じがする」「清潔感がある感じがする」など16項目について〇をつけて回答してもらい、どのような制服デザインがどのようなイメージをつくるのかを調べました。
14種類の制服ですが、女子は、ジャケット+シャツ+プリーツスカート+ネクタイもしくはリボン。男子は、ジャケット+シャツ+スラックス+ネクタイという組み合わせとしました。ジャケットの色は、紺、グレー、キャメルの3色。ネクタイとリボンの色は、赤と紺の2色。スカートとスラックスはチェック柄もあります。シャツの色は男女ともにすべて白に統一しました。
あとは男子用の学ラン(上下とも黒)、女子用のセーラー服(上下とも紺+白リボン)です。
調査結果を分析すると、中高生は制服デザインのイメージを「安定的で誠実」なイメージを作っているか、もしくは「先進的で活発」なイメージを作っているかの2つの軸で評価していることがわかりました。
実際にどの制服がどのようなイメージを持つのかを分析すると、男女ともに上衣がキャメル、下衣に柄がある場合は「先進的」なイメージとなり、紺やグレー、また上衣と下衣が同色の場合に「安定的」なイメージをつくることがわかりました。着目したいのが、ネクタイとリボンをつけ替えた場合です。例えば紺の上下+ネクタイは「安定的」なイメージを作りますが、このネクタイをリボンに替えると、「先進的」なイメージに評価が動きます。小さなアイテムを替えるだけでイメージが変化する事がわかりました。
三 木:

リボンやネクタイをつけたり、取り外したりするだけでイメージが変えられるのですね。
この様な色やアイテムの組み合わせで制服のイメージがこんなに違うというのは、貴重なデータですね。

内藤氏: 例えば伝統的な学校だとフルモデルチェンジは難しい場合があります。学校側としては今までの伝統を守りつつ、少し先進的なイメージを足すにはどうしたらいいのか、検討するための材料にもなります。生徒たちには、自分たちが着用している制服がどんなふうに見られているのかを知るきっかけにもなります。
制服を販売している会社には「どのような制服がどのようなイメージをつくるのか」を説明しやすくなるなど、研究データを活用してもらっています。
三 木: ちなみに学ランやセーラー服は、昔からあるものですが「安定的」なイメージが強いですか?
内藤氏: 学ランやセーラー服は、やはり「安定的」なイメージが強いですね。しかし、実は、学ランやセーラー服よりも紺の上下+紺のネクタイが一番落ち着いて安定して見えるという評価が得られたのです。
三 木: それはどう捉えたらいいでしょうか。
内藤氏:

セーラー服は昔からあるけれど、リボンがついている部分はかわいらしい印象と評価されるようです。「先進的」とは意味合いが違いますが、ジャケットやネクタイを組み合わせたものと比べて「安定的」ではない印象をつくっているというのが私の考察です。昔からある物が必ずしも古典的で安定的というのではなく、その時代で捉え方が違うという事です。また何年かしたら変わるかもしれないですね。
伝統があり比較的偏差値が高いと言われる学校では、紺の上下にネクタイなどのアイテムをつけないタイプの制服を採用している所が多いようです。周囲から、もしくは着用者である生徒から「ダサい」と思われても変えないのは、その制服自体がそこの学校の生徒だということを表す象徴(シンボル)となっているからです。
これは、難波先生のお話(明治時代、制服がエリートの証、社会的なシンボルであった)にもありましたが、今なお同じような理由で制服が着用されているのです。なお、制服をリニューアルしない理由としては、卒業生からの要望もあるようです。
一方、象徴として着たいのではなく、おしゃれに制服を着たいという生徒は、安定的なイメージをつくる制服よりもデザイン性の高い、少し変わった制服の着用を望む人が多いのではないかと思います。しかし学校側としては、制服をリニューアルしたいが、大幅に変えるには抵抗感があるという所が非常に多いので、素材やアイテムを少しチェンジする事でイメージを変えられるのではないか、そのような提案ができるのではないかと考えました。
そこで、株式会社チクマとの共同研究においてベーシックなデザインを展開し、新しいタイプの制服デザインを提案・作成しました。
例えば、ジャケットにセーラーカラーを取り入れてみる。一見セーラー服だと思うけれど、良く見るとジャケットになっている。それにシャツとネクタイを組み合わせ、スカートにはコントラストを効かせたラインを入れてみる。こうすることで、安定的なイメージだけでなく先進的なイメージも加わり、デザイン性の高い、少し変わった制服へと生まれ変わります。
このように、ベーシックデザインに何を加えたらどのようなイメージに変化するのかをさらに追及することで、新しい制服デザインの提案が可能となります。なお、提案した制服を実際に作成し、モデルに着用させてファッションショー形式で披露しました。このような方法で制服を呈示することは、生徒らの「着てみたい!」という意識を高め、着崩さずにそのまま着用した状態が最も望ましい状態である事を認識するようになり、愛着を持って着崩さずに制服を着用したいと思うようになると考えられます。

三 木: 軸があると方向性をどちらにするとか説明しやすいですよね。
またこの軸によって、変更するイメージの方向性を整理する事もできますね。
内藤氏: そうですね、制服を販売している会社の方は非常に助かるとおっしゃっていました。
先生方も生徒たちに「あなたたちが着ている制服はこのように見られているよ」と説明しやすいようです。
“どのように見られているかを意識するきっかけ ”
三 木: 制服を着ている本人たちが、どう見られるのかを意識して着ていないという事はありますか?
内藤氏: 実は、それを知ってもらうためにJSPS科研費を頂いてワークシートをつくりました。中高生向けのものですが、内容は非常に簡単です。服は着る人と着る場所によって見られ方が違うという事を勉強するツールでもあります。このシートを用いて、生徒自身が現在どのように制服を着ているのかを回答します。現在、着崩して着用しているのであれば、なぜそのような着方をしているのかを文字にして書いてもらいます。
それに対して、周囲の人にその着方についてどう思うのか、意見を書いてもらいます。その後、それについてみんなで話しあってもらうのですが、友達から「その着方、かわいいって言ったけど、本当は変だと思っていたの」と率直な意見が出てきたそうです。
本人は、それを聞いてショックを受け、感想欄に「次からはちゃんと着ようと思う」と書かれていたそうです。特にだらしないと言われた子は、「明日からちゃんと着ます」と。同年代の友達の意見は特に心に響くようです。
三 木: 文字にする事、友達の意見を聞く事が、きっと効果的なのですね。
内藤氏: 先生が一方的に指導するというのが常だったのですが、このシートを使う事によって生徒どうしが話し合って生徒どうしで改善の方向に向かっていくような流れになったという声をいただきました。現在、全国の約300校の授業や生徒指導の場で使われています。
制服をリニューアルする事もよいとは思いますが、自身の制服の着方を客観視し、生徒らの意識をどう変えていくかという事も大切だと思います。
三 木: 私たちが、色々な所で同じような事を行っているのが、パーソナルカラーの考え方です。ちょうど学生が制服を着崩すのと同じように、多くの人が本来の髪の色を別の色に染めたり、目の色を変えたりします。それが客観的にどう見えているのか、学生どうしでお互い言い合う場を設けます。
その際「もともと持って生まれた色のままでキレイって言われた」とか、「髪の色を茶色にしすぎたら実は無理っぽくってカッコ悪かったみたい」という話が出ます。友達に素の状態で言われると、恥ずかしいけれど嬉しかったり、素直に納得できます。そうなると先生が指導しなくても、客観的に見る事ができるのですよね。


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  服育着こなしワークシート(株式会社チクマ 服育net研究所)
  https://www.fukuiku.net/teaching/group/worksheet.html
  ※ご希望の方は、上記サイトよりお申込み下さい。
  なお、お申込みは、学校関係者の方による教育目的での利用に限らせていただいております。
  このワークシートはJSPS科研費 22700723の助成を受けて開発しています。
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被服関心度が制服の色を変える?制服の未来とは
内藤氏: 初めの方で制服の色は、紺が多いと言いましたが、ずいぶん前の時代からこの傾向は変わらないようで、制服の定番色となっています。
女子用の制服は、リボンやスカートで多少なりとも他の色が入ってきますが、男子用の制服は、紺とグレーが多いようです。
なお、女子用の制服ではリボンのつけ替え、ベストなどの色を選べたりするなど、制服の組み合せ方にバリエーションがみられますが、男子用の制服はバリエーションが少ないですね。一般的に男性は女性よりも被服に対する関心度は低いと言われていますが、そのような傾向が制服にもあるのかもしれません。
三 木: キャメル系を採用している学校は結構あるのですか?
内藤氏: 国際的な学科を持つ学校や、比較的新しくつくられた学校で使っている所が多いようですね。
三 木: 先進性とか国際性とかですよね。
内藤氏: まさにそこですね。
伝統校は、ほとんどが紺もしくは黒。白ブラウスにネクタイかリボン、リボンもあまり柄が入っていないものを組み合わせるという傾向があります。
しかし、時代の変化とともに制服のデザインや組合せ方、先生や生徒の意識、世の中全体の意識は変化すると思われますので、バリエーションは増えるのか、伝統を守りつつリニューアルはなされていくのか、どのような意味を持って制服のデザインは展開されていくのか、今後が楽しみです。
三 木: 先程おっしゃっていた通り、学校の新設やリニューアルの際に「先進性」に向かう学校と今までの「伝統」をさらに大切にする学校というように、ちょうどベクトルが逆になりますから、さらに差別化されて個性が出てくるのでしょうね。
おもしろいです。
これからの制服がどう変化していくのかすごく楽しみですね。
本日は、どうもありがとうございました。



お茶の水女子大学
グローバルリーダーシップ研究所 特任講師
内藤 章江  氏

2008年お茶の水女子大学リーダーシップ養成教育研究センター特任助教、博士(学術)。
2014年より現職。
専門は被服心理学、被服意匠・色彩学。
着用者・衣服・着用場面の相互関係が着用者自身や周囲に与える心理的・生理的影響の研究、
服育に応用可能な教育ツールの開発を主とする。
日本繊維製品消費科学会、日本家政学会、日本色彩学会等に所属。


お茶の水女子大学
基幹研究院人文科学系 助教 
難波 知子  氏

2010年お茶の水女子大学博士後期課程(比較社会文化学専攻)修了、博士(学術)。
2012年より現職。
近代日本の学校制服史が専門。単著は『学校制服の文化史』(創元社、2012年)、
『近代日本学校制服図録』(創元社、2016年)。
文化資源学会、意匠学会、国際服飾学会、日本家政学会等に所属。



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