一般社団法人 日本カラーコーディネーター協会[J-color]

一般社団法人日本カラーコーディネーター協会

 
 

対談企画Vol.6:NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)事務局 副理事長 伊賀 公一氏<後編>

2017.11.24

対 談 後 編
(前編はこちら)

“それぞれの役割”

三木:
色の見え方についての相談は、今は、主に学校関係者からが多いのですか?それとも親御さんからですか?
知らない人は聞きたいと思います。
伊賀氏:
どちらが多いというのはないけど、学校だと小学校が多いですよね。
小学校の先生たちはまずはちゃんと知りたいという人が多い、包括的にはなんとなく知っている人が多いですね。

カラーユニバーサルデザインの大切さがわかる本
三木:
一般的にもっと知られていることが多いと思っていました。
伊賀氏:
眼科医やデザイナー向けに勉強会や説明もします。
世の中にあまり資料がないからいろいろつくりました。
三木:
眼科医が知らないということに驚きです。
企業はピクトグラムや券売機とかで対応している状況なのにです。
私たちは、色弱の学生にどういう対処をするべきなのか、もしくは、セミナーを行う際に啓蒙の一助で何ができるのかについて伺いたいです。
伊賀氏:
知りたいと思う人は割と我々に近い人ですよね。
私たちにできることは、限られているので先生方はじめ色彩に関する有資格者の人は生徒さんがいっぱいいらっしゃるから、そういう方にどんどんしゃべってほしいんです。
それと私たちに何ができるのかですよね。
私たちがコースシナリオをつくってつなぎをしたらいいのかな?

一般社団法人日本カラーコーディネーター協会(J-color)
ライフケアカラー検定公式テキスト
三木:
最低限、これだけのことを学んでほしいということを教えてほしいですし、一般の方に伝えるにしてもいろいろな媒体があった方が良いと思うんですよ。
我々の検定に「色彩活用ライフケアカラー検定」があるのですが、そのテキストを改訂しようと思っているんですね。
そこで、「色覚の多様性」について3級で入口をつくって、2級でそれを伝えていく人たちが、話をしたり教えていく上でのポイントをマニュアル化、セミナー化していくのがいいと思いますし、伝える側として気をつけた方がいいことや、PTA向けに、自治体向けに、学校向けにというように対象ごとに伝えるポイントをつくっていただけると良いなと思っています。
すごく詳細な話はわからなくても、まずは何に気をつけたらいいのか、こういう場合は、どういう対処をしたらいいのか、どういう説明をしたらわかりやすいのかなどがあればいいなと思うし、つくっていきたいなと思います。

ライフケアカラーとしては、いろいろな人がいて、文化の違いもある。視細胞の違いももちろんあるし、いろいろな色の感じ方がある。総括的にやっていく中で 御機構がやっていらっしゃる「それぞれの眼によって見え方が違う」ということを改めて伝えていこうと思うんですね。それを知っているのと知らないのとでは全く違うし、そもそもライフケアカラーは、知っていた方が便利だし、安全だし、素敵だよね、という目的がベースにあるので。

伊賀氏:
出来ると思いますよ。やらなくちゃいけない。
今までいろいろわかっていなかったと思うし、これからわかるようになると思う。
新しい時代をつくりたいですよね。
僕らがこういう活動をしていると、以前は会う人によっては、「そんなことしていても無駄でしょ?色なんか変わらないから。」と言われましたよ。何かやる前にあきらめている人もいるわけです。
だからたとえばこのテレビの電源ランプの色は変わらないと思っている人がほとんどですよ。
三木:
でもこういうメーカーさんこそ、今、ユニバーサルデザインに非常にこだわりをもっているし、自分たちが社会的責任があるから勉強しなきゃいけないなと思う人たちが割と多いですよ。
伊賀氏:
それは、ユニバーサルデザインという言葉が一般化したからです。
色弱については、我々の団体が出来たのが2004年だからできてまだ13年目。
こういう技術って世の中に広めるのは15年はかかるから。
三木:
いろいろなセミナーをやっていらっしゃいますが、例えばこれからそれを伝えていくときに、ある程度わかったよ、ある程度話せるよ、みたいな段階があるといいですね。例えばファシリテーターとか、アドバイザーとかあると目標になるかもしれない。私たちがそのような人たちに会った時にどう対処したらいいのかというようなことをわかりやすくしていただけると少しでも自分が色に関わっている人間として手伝えたっていうことができるかなと思うんですよね。
伊賀氏:
たぶんそれについてやらなくてはならないのはうちの団体でしょうか(笑)
というのも13年間ずっと毎日色覚問題の解決のことばかりやっている、組織がうちしかないっていうのもあって。
年間600件くらい、検証したり実験したりしながら。配色のカラーコンサルタントをやっています。
ありとあらゆる業界のものがありますよ。スマートフォンから信号機から、ハザードマップから教科書とあって、いろいろな人と話すから配色に関するプロフェッショナルの様々な引出しがここに2000個とかあるんですよ。その中の引きだしにあるものは出していけばいいわけなんで。中には製品じゃない学校の先生の話とか保護者の方、当事者の場合もありますし、その引出から出したのがこのコミックエッセイ「色弱の子どもがわかる本」なんですけど。
親からの質問という。
毎日電話で応対していたのが、本を出すことでかなり減りました。

“皆で手をつないで行くために”

三木:
伊賀さんにとって色の検定は、勉強して意味がありました?
逆にいうとお互いを知るというのもそうなんだと思いますけど、色の見え方が違う人たちにとって色の勉強をする意味としては、何が一番大きいのでしょうか?
伊賀氏:
何が良かったって 無秩序にただわかりにくいとか、話したくないと思っていた色の世界は、実は非常に秩序化されていてわかりやすい世界だとわかったこと。これから座標値を使えば話ができるんだ!って。経験値ではなく知識で色について語れるから。

それまでは、たぶん、色から逃げていたんでしょうね。
色が本当に嫌いだからじゃなくて、ある色が灰色だったり、青緑だったり、ピンクだったりまたは黄緑やオレンジだったり人によっていうことが違っていて、わけがわからないから嫌なんですよ。
それらはコミュニケーション、ボキャブラリー、語彙力の問題ですよ。
私たち、赤と緑は同じに見えているのでその違いがわからないのですよ。
同じように見えているものが違うと言われると話が進まない。もう無理だなと思っちゃう。
そうすると、皆さんが見ていることは本当なのか?と思っちゃう。
どうしたらわかるかなというと、いくつかの方法がわかっているのですが、たとえば色を計測器ではかってそのデータを置いてみると理解しやすくなる。
文字と角度(色度図)の中の座標値というように、科学の目で分析するところを信じて、計測器とカラーチップと言葉を結び付けて確認する、それをここでやりました。
理論の方で色を理解したということで。
だれしもなじみのない言葉を覚えるのは大変でしょう。
例えば、蘇芳色っていうのは、赤のどの辺の色かっていうのは、色彩学の色名辞典に色つきで出ていればわかるけど、見たままでこの色を感じなさいというのがほとんどなんです。

三木:
文字情報としてイメージを膨らませたり色の感じを書いたものが世の中にないということ?
伊賀氏:
実際に色チップがあって蘇芳色っていうのはマンセル値の赤のこの辺ですよってあればわかるけど。そういうものが子供の頃になかったよね。
色弱の子供のために子供用色彩学があるといいなと思ったり。
色と数値表があれば、系統化して色を覚えられるようになるかなって。

軸ができれば、配色理論とかも学べるようになる。
こういう色とこういう色を組み合わせれば、一般の人にはこう見えているんだとかわかってくる。

三木:
理論をもとにして、配色のコントラスト感や印象を理解するんですね。
伊賀氏:
軸がないとわからないよね。
三木:
軸ね。それと言語を結び付けて。
くすんだ、重みのある赤 暗い赤とかそういうイメージできる言葉があるとわかる。
伊賀氏:
大事なのは言葉、色、体系があって実際の色があって、自分の眼と計測器、これが結びついて感じられるという感じですよね。

それぞれの役割分担といったときに、カラーコーディネーターさんとかに何かできることないのかな?
いっぱいあると思うんですよ。

三木:
カラーコーディネーターは、色のことを伝える人が好きな人が集まっているから、これについても知識を得て、伝え方のノウハウを少し学べば、いろいろな場面で自分でも伝えることで楽しいと思える人が多いと思いますよ。
そういう話を地元の集まりやPTAで話したいっていう人はたくさんいるんですよ。
伊賀氏:
コミュニケーションですよね。
まわりに、いっぱいそういう人は、いるのにそういう話をしない。
皆、聞き方がわからないというんだよね。
別に聞いてもいいと思う。
白と黒の違いが100としたら、この赤と緑はどのくらい離れて見える?って。
何色はどういう風に見えるというのはわからないけど、いわゆる色と色の距離感、どのくらい離れて見えるのかはわかる。
三木:
お互いが情報を共有するために色の距離感が基準になるのであれば、これからやっていきたいですね。
伊賀氏:
私たちの代わりに話をしてくれる人たちを増やしたいですね。
今は、差別語だらけの世界から少し配慮された言葉が使われるようになった、それぐらいの変化があったくらいに感じています。
あと配色を決めなきゃいけない時は、我々の意見も聞いてほしいし、カラーコーディネーターと色弱の人が一緒に元気になってもらう方法というのもあった方がいい。
三木:
講座、ワークショップ、個別相談会、何でもできる。
今後どのようなきっかけでご一緒できるかわかりませんが、ぜひご一緒させていただきたいと思います。
ありがとうございました。
◆◆◆ 前編はこちら ◆◆◆
NPO法人 カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)
事務局 副理事長 伊賀 公一
http://www.cudo.jp/

自由研究者 視覚情報デザインコンサルタント、CUDO専属テクニカルアドバイザーとして講演・セミナー、コンサルタント、外部顧問などを引き受けている。
1級カラーコーディネーター(商品色彩)
湘南工科大学 デザイン科 特任講師
日本色彩学会正会員 日本建築学会正会員
著書:カラーユニバーサルデザイン(ハート出版 2009年)
色弱が世界を変える(太田出版 2014年)他